11/12/2012

八丈島② 初日〜後編〜

どれくらい経ったのか、
目を開けるとあたりはすっかり暗くなっていた。

ベッドからのそっと這い出し、宿を出る。

旅館や民宿ではないので、
もちろんごはんなど出て来ない。

むろん、それは僕が望んでることでもある。

つたない海外経験をして、
その魅力にハマってしまったのもあるけど、
所詮、閉じ込められた中でなにを見ようがしようが
それじゃ全然面白くもないしかじったことにすらならないと
青いながらに思っているんです、一応。

しかし、いくら八丈島が伊豆・小笠原諸島の中で
一番大きな島と言っても、
島の人は基本家での食事が前提なので
(ここが日本らしいと言えばそんな気もする)
事前にご飯を食べるとこを調べてみたものの
やはりそんな多くはない。

そんな中でまず選んだ一軒。
八丈島郷土料理 梁山泊」さん。

選んだ理由なんて言わずもがなですよね。

宿からお店が集まってるエリアまでは
歩いて15分くらいだったかな。
さすがに集落から離れた宿だったので
けっこう歩いた記憶が...

ガラガラ〜っと戸を開けると
中はお客さんでかなりのにぎわい。

人差し指一本立てて必死にひとりをアピールすると
入り口にもっとも近いカウンター席を案内してもらえた。

さて。
席に着けたのはいいもののココからが大変。
いかんせん重度の優柔不断なので
オーダーが決まらない決まらない。

たまりかねたのか、
店員のお姉さんが注文を取りにきてくれた。

『ご旅行ですか?』
この言葉に助けられ、
『あのぉ、実は島のものを食べたいんですけど...』
と、話をすると
少しして若大将とおぼしき人が
『それでしたら、少しずつでお出ししましょうか?』
と、ありがたきお言葉をかけてくれたので
思いっきりその言葉に甘えました。

で、ご用意していただいたのがこちら。

右手前から、
お刺身、尾長鯛の漬け焼き、隼人瓜と豚肉の煮物、ぶど、島たくあん、
飛魚のさつま揚げ、にょうげ芋、お通しのひじき。

にょうげ芋とは、里芋のこと。島ではそう呼ぶそうです。
添えてあった酒盗をつけるとこれまた絶品!

ぶどは、カギイバラノリという海藻を煮だして寒天状に固めたもの。
磯の香りいっぱいで思わずにっこり。

尾長鯛は、ここらへんでは馴染みがあるそうですが
漁獲高があまり高くないのか僕は初めて食べました。
高級魚と言われたのも納得の旨味と脂のノリにうっとり。

お酒は、もちろん島のものを。

ですが、八丈島には現在4つの島酒を醸すお蔵さんがありまして
それを端から行くだけでも大変なのであります。
(八丈興発,樫立酒造,坂下酒造,八丈島酒造)

ちなみに。
実は、もう一つ磯崎酒造さんがいらっしゃったのですが
惜しまれつつも数年前に廃業されてしまいました...。

一人で来てるからなのか、
店員さんが何かと気を使って話しかけてくれたりして
美味しいお酒とお料理とあいまって
かなーりいい感じに。

こうなると自分でも恥ずかしいくらいに良く喋る。

おかげさまで実に楽しい島での1日目を締めくくることが出来ました。





八丈島① 初日〜前編〜

案内所でゲットした島の地図を片手に
空港を出てみると
ヤシの木が道路沿いに整然と植えられ、
いやはや南国に来たぞー!って気分を嫌が応にも盛り上げてくれます。



そして、町中じゃないから当然だろうけど
人がいない。時折車が通り過ぎるだけ。
いつも人でごった返してる場所で働いてるから
このギャップが堪らない!

とことこと歩く。
いやぁ、こんなにゆっくり歩くのもホント久しぶりだな。
なんでいつもあんなにせかせか歩くんだろ。

町役場でレンタサイクルゲット。
しかも、去年壱岐で借りて感動した電動チャリ!



これで島をグルッと外周してみようと言う算段であります。
それぞれに名前がついてるようで、僕の相棒は「はんけ号」。
注釈によると、島の言葉で「おもしろい」と言う意味だそう。
これは幸先のいい!きっと面白い島旅になるぞ!
では、出発進行〜。
(ちなみに、あとで黄八丈の工房で出会った島ガイドのおじさんに教わったところによると
 「おもしろい」と言うよりは「おどけた」とかの意味合いだそうです)

ほどなく、
パンフレットやガイドブックにも載ってる有名な「玉石垣」が。
まんまる〜。



いやしかし、いくら電動チャリとはいえ、
集落を抜けるといきなり大坂というきっつい上りがあって
いきなりヘロヘロ。

でも!右手にはこれでもかと言わんばかりの絶景!
疲れも吹っ飛ぶと言うものです。



朝から何も食べてなかったので
お店を探しながら自転車こいでたものの
午前中でまだ開いてないところばっかりだったようなので
ローカルなストアで小休憩がてらにパンを購入。



うむ。ローカル色満点♪

黄八丈の工房をチラッと。



すんごいキレイな色。
黄八丈には、「黄」「樺」「黒」と3色の色があるのですが
そのどれもが植物から成るのです。
工房の中にあった白洲正子の写真と一緒に載ってた言葉に、
「本来の草木染めと言うのはくすんだものでなくて実に鮮やかなものなのです」
と、いうような内容が書いてあって(彼女の言葉かどうかは忘れましたが)
たしかにその通りのしっかりとした色合いだったのが印象的でした。

せっかく来てるのにいっつも写真を撮るのを遠慮してしまって
こんな遠目からしか撮れなかったのが実に残念。

さてさて。

さらにぐんぐん自転車をこいでいきます。

唐突ですが、八丈島は温泉の島でもあります。
ま、僕もシマダスで調べるまでは知りませんでしたが。
なんと、島には7つもの温泉があるのであります。

なので、八丈島に行くことを決めた時から
目的の一つにしっかりと島の温泉に行こうと決めていました。

そして、それが初日前半の目的地でもありハイライト。

電動チャリを借りる時に担当の人に温泉はどこがいいですかね?と探りを入れ、
お進めしてもらった場所「みはらしの湯」に行ってきました。

ここのオススメは、なんと言ってもその名の通りその眺め。
温泉から海が一望できるのであります。


(これは休憩所からの景色ですが、イメージとしてはこんな感じ)

季節がらか時間帯からか、他に1組しかいない湯にのんびり浸かりながら
島の海岸線や水平線を眺められるこの空間はたしかにステキ☆

自転車での疲れもすっかり癒されます。

湯から上がり一息ついてるとここで帽子がないことに気付く。

あれ?と、思って脱衣所に戻るも見当たらず
おろおろしてると受付のおばあちゃんも心配してくれて一緒に探してくれた。

それでも見当たらなかったのでおばあちゃんにお礼を言って温泉を後にし、
ちょっと道を戻ってみる。

それでもどこにも落ちてるの見当たらず。

うーん、バックパックの紐に通して結んでたはずなんだけどな。

気を取り直し、電動チャリで出発。

出足の大坂で悲鳴を上げたものの
実はこっから続く「登龍峠(のぼりょうとうげ)」の道が一番キツかった...
いくら電動チャリとはいえ、ね。

しかも、峠を越す一歩手前でバッテリー切れちゃうし(笑)
担当のひとりのお兄さん曰く、
『島一周くらいはウマくやればバッテリーもちますよー』
なんて言ってたのに...そんな電動アシストに頼ってばかりじゃないと思ってたんだけどなぁ。

そんなこんなで峠をなんとか下り、集落へ帰還。

時はすでに14時手前。
ランチの時間が微妙だったので、スーパーで島寿司をかって昼食。



登龍峠のおかげで、見晴らしの湯での癒しもどこへやら
さすがに島の北半分をまわる気力もなく
チャリを返却。

歩いて今回の宿「Hotchy Joe's Hostel」へ。

外で食事が出来る環境の時は
宿は寝れればいい(まぁ、時と場合によりますが)という考えなので
極力安い宿を..と探して見つかったこちら。

なんと1泊2200円。
しかも、ドミトリー。

日本でのドミってのもいいなと即決。

散々うろうろして辿り着いた宿は、港の真ん前。
あぁ、きっとオンシーズンにサーファーとかダイバーの方が
たくさん利用される宿なんだろうな。

ていうか、隣というか併設されてるダイビングショップが受付だったもんね。
(だから入り口が分からず迷ったのねw)

ベッドに案内してもらうと、
今日の早朝からのアレコレとこれまでの日々のアレコレが一気に出てきたのか
猛烈な眠気が。

夜までは少し時間に余裕があるな。

バックパックをドサッと置くと
そう思い、ひとまずごろん。







八丈島 序章(ていうか、幻の青ヶ島行き)

一年ぶりの連休。
なんと今年は偶然にも自分の誕生日を含んでいたので、
これはちょっととっておきの場所に行きたいなーとあれこれ思案。

いくつかあった候補から、
マイルが溜まっていたのと時間的制約内で移動時間が少なく
きっちりオフ感が感じられるところ、
そして見るべき造り手たちがいるところと言う理由で
青ヶ島に弾丸で行こうと思った。

誕生日の夜に青ヶ島で満点の星空を見上げられたらすごいなーって。

そもそも若かりし頃に「青酎」と出会って
それにハマってしまった時からの憧れの場所。

日本最後の密造酒(おそらく)。
一つの名前、蒸留所だけど、造る島人が複数人いて
その人たちで全く味が違うこと。
今でも麹づくりから自然のものを使う伝承的な手法を残す唯一の島酒。
(一部の方の造り方だけですが)
土地の人による土地のもので造る土地の人の為の酒というスタイルを
おそらくもっとも色濃く残しているお酒。


島としても二重式のカルデラ火山を持ち、
日本で一番人口の少ない村でもあり、
(ちなみに日本で一番長い村は吐噶喇の十島村)
住所は「無番地」。


そんな島が伊豆諸島の最南端。
つまり、東京都にある。

東京にある絶海の孤島。

つまり、秘境。

むはー。
そんな単語が並んだら行きたくてたまらないのであります。




今まで行ったイベントで島の人に聞いたりしてはいたけど
改めてアクセスを調べると
東京から直通はなく、
八丈島からフェリーかヘリで行けるとのこと。

なるべくローカルでゆっくりな移動手段が好きなんだけど
断崖絶壁の青ヶ島は、
なんとフェリーの就航率が50%!?

これは時間をお金で買ってでもヘリしかないか...
と、予約の始まる予定日の1か月前に電話をしてみるも
なんとすでに満席で4席のキャンセル待ち!!!

それもそのはず。
青ヶ島までのヘリは1日1便で席数も9席しかないのであります。

でもでも、
誕生日に青ヶ島にいたらの妄想を捨てられず、いざ当日。



八丈島空港の到着ロビーに降り立つと
すかさず案内カウンターでフェリーの運航を聞いてみる。
『あいにく本日は欠航のようですね』

...。


当日天気がよかったのでもしやとは思ったんだけど、
前日までの天気が影響してか風も強く波も高かったみたい。

そっか。残念と思い、ふと左を見やると
「東京愛ランドシャトル」(つまりヘリの)搭乗カウンターが。

あ、そっか。
ヘリもココから出るんだと今さらながらそんなことに気付く。

一か八かと当日キャンセルが出てないか聞いてみるも
『あいにく本日はまんせきですね〜』とごもっともな回答。


ちーん。


はい、夢の青ヶ島行き、
今回は叶わず。

でもでも、ぜったいいつか行ってやるんだもんね。

ということで、バックパックを背負い直し空港ロビーを出たのであります。