11/12/2012

八丈島② 初日〜後編〜

どれくらい経ったのか、
目を開けるとあたりはすっかり暗くなっていた。

ベッドからのそっと這い出し、宿を出る。

旅館や民宿ではないので、
もちろんごはんなど出て来ない。

むろん、それは僕が望んでることでもある。

つたない海外経験をして、
その魅力にハマってしまったのもあるけど、
所詮、閉じ込められた中でなにを見ようがしようが
それじゃ全然面白くもないしかじったことにすらならないと
青いながらに思っているんです、一応。

しかし、いくら八丈島が伊豆・小笠原諸島の中で
一番大きな島と言っても、
島の人は基本家での食事が前提なので
(ここが日本らしいと言えばそんな気もする)
事前にご飯を食べるとこを調べてみたものの
やはりそんな多くはない。

そんな中でまず選んだ一軒。
八丈島郷土料理 梁山泊」さん。

選んだ理由なんて言わずもがなですよね。

宿からお店が集まってるエリアまでは
歩いて15分くらいだったかな。
さすがに集落から離れた宿だったので
けっこう歩いた記憶が...

ガラガラ〜っと戸を開けると
中はお客さんでかなりのにぎわい。

人差し指一本立てて必死にひとりをアピールすると
入り口にもっとも近いカウンター席を案内してもらえた。

さて。
席に着けたのはいいもののココからが大変。
いかんせん重度の優柔不断なので
オーダーが決まらない決まらない。

たまりかねたのか、
店員のお姉さんが注文を取りにきてくれた。

『ご旅行ですか?』
この言葉に助けられ、
『あのぉ、実は島のものを食べたいんですけど...』
と、話をすると
少しして若大将とおぼしき人が
『それでしたら、少しずつでお出ししましょうか?』
と、ありがたきお言葉をかけてくれたので
思いっきりその言葉に甘えました。

で、ご用意していただいたのがこちら。

右手前から、
お刺身、尾長鯛の漬け焼き、隼人瓜と豚肉の煮物、ぶど、島たくあん、
飛魚のさつま揚げ、にょうげ芋、お通しのひじき。

にょうげ芋とは、里芋のこと。島ではそう呼ぶそうです。
添えてあった酒盗をつけるとこれまた絶品!

ぶどは、カギイバラノリという海藻を煮だして寒天状に固めたもの。
磯の香りいっぱいで思わずにっこり。

尾長鯛は、ここらへんでは馴染みがあるそうですが
漁獲高があまり高くないのか僕は初めて食べました。
高級魚と言われたのも納得の旨味と脂のノリにうっとり。

お酒は、もちろん島のものを。

ですが、八丈島には現在4つの島酒を醸すお蔵さんがありまして
それを端から行くだけでも大変なのであります。
(八丈興発,樫立酒造,坂下酒造,八丈島酒造)

ちなみに。
実は、もう一つ磯崎酒造さんがいらっしゃったのですが
惜しまれつつも数年前に廃業されてしまいました...。

一人で来てるからなのか、
店員さんが何かと気を使って話しかけてくれたりして
美味しいお酒とお料理とあいまって
かなーりいい感じに。

こうなると自分でも恥ずかしいくらいに良く喋る。

おかげさまで実に楽しい島での1日目を締めくくることが出来ました。





八丈島① 初日〜前編〜

案内所でゲットした島の地図を片手に
空港を出てみると
ヤシの木が道路沿いに整然と植えられ、
いやはや南国に来たぞー!って気分を嫌が応にも盛り上げてくれます。



そして、町中じゃないから当然だろうけど
人がいない。時折車が通り過ぎるだけ。
いつも人でごった返してる場所で働いてるから
このギャップが堪らない!

とことこと歩く。
いやぁ、こんなにゆっくり歩くのもホント久しぶりだな。
なんでいつもあんなにせかせか歩くんだろ。

町役場でレンタサイクルゲット。
しかも、去年壱岐で借りて感動した電動チャリ!



これで島をグルッと外周してみようと言う算段であります。
それぞれに名前がついてるようで、僕の相棒は「はんけ号」。
注釈によると、島の言葉で「おもしろい」と言う意味だそう。
これは幸先のいい!きっと面白い島旅になるぞ!
では、出発進行〜。
(ちなみに、あとで黄八丈の工房で出会った島ガイドのおじさんに教わったところによると
 「おもしろい」と言うよりは「おどけた」とかの意味合いだそうです)

ほどなく、
パンフレットやガイドブックにも載ってる有名な「玉石垣」が。
まんまる〜。



いやしかし、いくら電動チャリとはいえ、
集落を抜けるといきなり大坂というきっつい上りがあって
いきなりヘロヘロ。

でも!右手にはこれでもかと言わんばかりの絶景!
疲れも吹っ飛ぶと言うものです。



朝から何も食べてなかったので
お店を探しながら自転車こいでたものの
午前中でまだ開いてないところばっかりだったようなので
ローカルなストアで小休憩がてらにパンを購入。



うむ。ローカル色満点♪

黄八丈の工房をチラッと。



すんごいキレイな色。
黄八丈には、「黄」「樺」「黒」と3色の色があるのですが
そのどれもが植物から成るのです。
工房の中にあった白洲正子の写真と一緒に載ってた言葉に、
「本来の草木染めと言うのはくすんだものでなくて実に鮮やかなものなのです」
と、いうような内容が書いてあって(彼女の言葉かどうかは忘れましたが)
たしかにその通りのしっかりとした色合いだったのが印象的でした。

せっかく来てるのにいっつも写真を撮るのを遠慮してしまって
こんな遠目からしか撮れなかったのが実に残念。

さてさて。

さらにぐんぐん自転車をこいでいきます。

唐突ですが、八丈島は温泉の島でもあります。
ま、僕もシマダスで調べるまでは知りませんでしたが。
なんと、島には7つもの温泉があるのであります。

なので、八丈島に行くことを決めた時から
目的の一つにしっかりと島の温泉に行こうと決めていました。

そして、それが初日前半の目的地でもありハイライト。

電動チャリを借りる時に担当の人に温泉はどこがいいですかね?と探りを入れ、
お進めしてもらった場所「みはらしの湯」に行ってきました。

ここのオススメは、なんと言ってもその名の通りその眺め。
温泉から海が一望できるのであります。


(これは休憩所からの景色ですが、イメージとしてはこんな感じ)

季節がらか時間帯からか、他に1組しかいない湯にのんびり浸かりながら
島の海岸線や水平線を眺められるこの空間はたしかにステキ☆

自転車での疲れもすっかり癒されます。

湯から上がり一息ついてるとここで帽子がないことに気付く。

あれ?と、思って脱衣所に戻るも見当たらず
おろおろしてると受付のおばあちゃんも心配してくれて一緒に探してくれた。

それでも見当たらなかったのでおばあちゃんにお礼を言って温泉を後にし、
ちょっと道を戻ってみる。

それでもどこにも落ちてるの見当たらず。

うーん、バックパックの紐に通して結んでたはずなんだけどな。

気を取り直し、電動チャリで出発。

出足の大坂で悲鳴を上げたものの
実はこっから続く「登龍峠(のぼりょうとうげ)」の道が一番キツかった...
いくら電動チャリとはいえ、ね。

しかも、峠を越す一歩手前でバッテリー切れちゃうし(笑)
担当のひとりのお兄さん曰く、
『島一周くらいはウマくやればバッテリーもちますよー』
なんて言ってたのに...そんな電動アシストに頼ってばかりじゃないと思ってたんだけどなぁ。

そんなこんなで峠をなんとか下り、集落へ帰還。

時はすでに14時手前。
ランチの時間が微妙だったので、スーパーで島寿司をかって昼食。



登龍峠のおかげで、見晴らしの湯での癒しもどこへやら
さすがに島の北半分をまわる気力もなく
チャリを返却。

歩いて今回の宿「Hotchy Joe's Hostel」へ。

外で食事が出来る環境の時は
宿は寝れればいい(まぁ、時と場合によりますが)という考えなので
極力安い宿を..と探して見つかったこちら。

なんと1泊2200円。
しかも、ドミトリー。

日本でのドミってのもいいなと即決。

散々うろうろして辿り着いた宿は、港の真ん前。
あぁ、きっとオンシーズンにサーファーとかダイバーの方が
たくさん利用される宿なんだろうな。

ていうか、隣というか併設されてるダイビングショップが受付だったもんね。
(だから入り口が分からず迷ったのねw)

ベッドに案内してもらうと、
今日の早朝からのアレコレとこれまでの日々のアレコレが一気に出てきたのか
猛烈な眠気が。

夜までは少し時間に余裕があるな。

バックパックをドサッと置くと
そう思い、ひとまずごろん。







八丈島 序章(ていうか、幻の青ヶ島行き)

一年ぶりの連休。
なんと今年は偶然にも自分の誕生日を含んでいたので、
これはちょっととっておきの場所に行きたいなーとあれこれ思案。

いくつかあった候補から、
マイルが溜まっていたのと時間的制約内で移動時間が少なく
きっちりオフ感が感じられるところ、
そして見るべき造り手たちがいるところと言う理由で
青ヶ島に弾丸で行こうと思った。

誕生日の夜に青ヶ島で満点の星空を見上げられたらすごいなーって。

そもそも若かりし頃に「青酎」と出会って
それにハマってしまった時からの憧れの場所。

日本最後の密造酒(おそらく)。
一つの名前、蒸留所だけど、造る島人が複数人いて
その人たちで全く味が違うこと。
今でも麹づくりから自然のものを使う伝承的な手法を残す唯一の島酒。
(一部の方の造り方だけですが)
土地の人による土地のもので造る土地の人の為の酒というスタイルを
おそらくもっとも色濃く残しているお酒。


島としても二重式のカルデラ火山を持ち、
日本で一番人口の少ない村でもあり、
(ちなみに日本で一番長い村は吐噶喇の十島村)
住所は「無番地」。


そんな島が伊豆諸島の最南端。
つまり、東京都にある。

東京にある絶海の孤島。

つまり、秘境。

むはー。
そんな単語が並んだら行きたくてたまらないのであります。




今まで行ったイベントで島の人に聞いたりしてはいたけど
改めてアクセスを調べると
東京から直通はなく、
八丈島からフェリーかヘリで行けるとのこと。

なるべくローカルでゆっくりな移動手段が好きなんだけど
断崖絶壁の青ヶ島は、
なんとフェリーの就航率が50%!?

これは時間をお金で買ってでもヘリしかないか...
と、予約の始まる予定日の1か月前に電話をしてみるも
なんとすでに満席で4席のキャンセル待ち!!!

それもそのはず。
青ヶ島までのヘリは1日1便で席数も9席しかないのであります。

でもでも、
誕生日に青ヶ島にいたらの妄想を捨てられず、いざ当日。



八丈島空港の到着ロビーに降り立つと
すかさず案内カウンターでフェリーの運航を聞いてみる。
『あいにく本日は欠航のようですね』

...。


当日天気がよかったのでもしやとは思ったんだけど、
前日までの天気が影響してか風も強く波も高かったみたい。

そっか。残念と思い、ふと左を見やると
「東京愛ランドシャトル」(つまりヘリの)搭乗カウンターが。

あ、そっか。
ヘリもココから出るんだと今さらながらそんなことに気付く。

一か八かと当日キャンセルが出てないか聞いてみるも
『あいにく本日はまんせきですね〜』とごもっともな回答。


ちーん。


はい、夢の青ヶ島行き、
今回は叶わず。

でもでも、ぜったいいつか行ってやるんだもんね。

ということで、バックパックを背負い直し空港ロビーを出たのであります。

9/26/2012

バター × バター

先日、Twitterでその存在を知ってから狙っていた
伊豆大島で造られているバター「大島バター」が
竹芝の伊豆・小笠原アンテナショップ「東京愛らんど」に入荷したとの情報を掴み
空き時間を利用して見事ゲットしてきました。


パッケージがかわいい!
牛さんの表情が若干シュールだけどw
箱を開けると
これまた包み紙にまで三原山が描かれていてレトロでキュート☆


なんでも、2007年に一度は製造をやめてしまったそうなのですが
有志の方々が島の酪農を守ろうと立ち上がり
再出発を果たし、徐々に製品が出てくるようになったようです。

なので、まさか島外にまで出回ってくるとは思わず
この機会を逃すべく買いに行ったのです。

島好き、手仕事の食品好きとしてはマストバイなのであります(笑)

そして。
これまた以前から気になっていたバター「トラピストバター」。


こちらは、ところ変わって北海道のバター。
トラピストの言葉からも想像できる通り、
「トラピスト修道院」という修道院で造られたバター。

しかも、日本ではあまり馴染みのない発酵バターなのです。
ちなみに日本では非発酵バターが一般的で、
発酵バターはヨーロッパで主に使われてるようです。

まあでも、昨今にぎやいだ「エシレ」のおかげで、
だいぶ一般の人にも発酵バターの存在も認知はされたのかな。
(あ、僕も然りですが)

そんな発酵バターを日本の、しかも修道士の人たちが造ってるとあらば
食べてみたいと言うのが食品好きの性というもの(笑)

大島バターを買った後日、八重洲にある北海道物産館をなんとなしに覗いたら
しれっと他のバターに混じって並んでいらっしゃるじゃありませんか!

ということで購入。


せっかく貴重なバターが2つも揃ったのでこれはと思い「バター食べ比べ」をしてみました。

軽くトーストしたパンにそれぞれを塗ってもぐもぐ。


まずは大島バター。こちらは非発酵バター。

色は白みのつよいクリーム色で、フレッシュなミルクの香り。
サラリとしていて実にやさしい味わい。
まるで小さい頃を思い出すような包み込むようなイメージ。
(小さい時にまっとうなバターを食べていた記憶は全くないけど...)

かたや、トラピストバター。発酵バター。

黄色みがかなりしっかりとしたクリーム色。
香りにすでにチーズなんかを想起させる発酵臭が感じられる。
口に含むとその複雑味、コクが口にぽわんと広がってすぅと抜けていく。
リッチ感あり。

そのままアテとしてなんてネットで見かけた気がするけど
それも納得できるほどバター単体で滋味がしっかり感じられる。

これでレーズンバター作ったらおいしいだろうなぁ。


今度は、なんならそれこそエシレと日仏発酵バター比較でもしてみよっかな。


包丁工房タダフサ

去年だったか、お客様でもある親しい方に教えてもらい
一目惚れしてしまった包丁がある。

(ネットから拝借しました)


包丁工房タダフサ
全国に金物の街としてその名を馳せる、新潟県三条市のメーカーさんだそうです。

包丁と言えば、「木屋」さん「有次」さんが憧れの存在だった僕にとって
タダフサさんの包丁はまったく新しいものに映りました。

イメージで言うと
前者のそれは鋭利で力強く凛と引き締まったものであり、
後者は、包丁と言う金物でありながら柔らかく温もりすら感じるものだったのです。

本格的な包丁はあくまでも憧れの存在であり、
テレビの向こう側の人たちのように感じてたんだけど
タダフサさんの包丁は、とっても親近感が湧き家庭で使うイメージがすっと入ってくる。

いわゆる職人たちからどうしてこんな発想の包丁が生まれたんだろう?
と思ったら、柴田文江さんというプロダクトデザイナーがプロデュースに関わってるようで
なるほどと腑に落ちました。

女性だからこそ表現できる曲線美と言うのかな。
柄の部分の質感、丸みは言うまでもなく
刃の部分も含めての全体的なフォルムに至るまで優しい丸みで統一されている。

厨房と言うよりも台所がこの上なく似合う包丁。

どこで買えるんだろう?と、検索したら
パン切り包丁は二子玉の高島屋に入ってる粋更さんで取り寄せが出来たみたいなんだけど
他の包丁もとなると最寄りで船橋にある「みんげい おくむら」さんで取り扱いが!

ていうか、おくむらさんの他の取り扱いにも興奮してしまい
これはいつか行かねば!と思いながらなかなか船橋まで行けずに幾月が経過...

ところが。
先日おくむらさんの話をした友達から
「渋谷のヒカリエで期間限定出店してるみたい」と朗報。

なんとか自分のお休みが出展季刊の最終日にギリギリ間に合ったので
喜び勇んでいって参りました。

購入したのは、
パン切り包丁と三徳包丁(大)の2つ。
(写真左端からの2本)

買ってからも、なんだかもったいなくて全然使えてなかったんだけど
さっきやっとパン切り包丁を使ってみました。

あぁ、情報通りパンくずが少なくてすぅーっとした切れ味。

丸みのある柄はしっくりと手に馴染むし。

道具ってやっぱり大事だな。
これからもっと台所が楽しくなりそう。


2/29/2012

秋川蔵元訪問②野崎酒造

近藤社長の車で、
次の訪問先、清酒「喜正」醸造元、「野崎酒造」へ。

あまりにも雪がスゴい為、
少し手前の「戸倉」交差点で降ろしていただく。

近藤社長、その節はありがとうございました。
(後日、NHKで拝見しました!)

が、
降ろしていただいたものの、
約束していた時間まで少しあったので
わずかでも暖をとりたく
交差点に面しているコンビニに入る。

さぁ!
いざ、野崎酒造!
いざ、その門の中へ!



と、門の写真を撮っていたら
雪かきをしていた奥様に出くわしてしまい
「こんな日にわざわざありがとうございます。社長〜!」

なんて感じで、心の準備などもできぬまま
あれよあれよと言う間に客間へ...

野崎社長、実は新店舗オープンなどの折などにも
お越しいただいたり、
昨年の秋にひょっこり自転車で来てしまった時に
応対していただいたりもあったのだけど、
こうして正式に訪問するのは初めて。

それまでは、
実に控えめな人だなと言う印象があったのですが、
話してみると
そんな印象はちょっと改めざるを得ないほど。

訥々とした語り口ながら、
実に濃い内容をお話し頂きました。

そして、蔵の中へ。

造り自体は終わってしまったものの、
運良く大吟醸の搾りに立ち会うことが出来ました。

しぼりたてのお酒をきかせていただくと、
まだまだアルコール感は強いものの
素晴らしい芳香と旨味が口いっぱいに広がりました。

これは実に楽しみ♪
(ちなみに、見事今年も金賞を受賞されました!おめでとうございます!)

そういえば、
説明の中の「搾り」の部分で、
ちょっと聞き慣れない言葉が...
ヤブタのことを指して説明していただいた時に「エネスケ」って聞こえて、
「???」と思ったんですが、
調べてみたところ、ヤブタというのは
薮田産業(株)が販売している醪圧搾機の通称で
それ以外に、NSKエンジニアリング(株)が販売している機械もありまして。

因みにコレ↓



....「エネスケ」→「NSK」だったみたいです(照)
なんて聞き間違い!

そんな野崎酒造さんのお話の中でとても印象に残ったのが、

・基本県外には未出荷
・8割が地元消費
・地元以外はごく一部の地酒専門店のみ

というところ。

地元の人に喜ばれるお酒でありたい、
だから、それ以外の人たちを意識した商品を作ろうとは考えてない。
海外も然り。
今の規模が質を保てるギリギリのライン。
これ以上、杜氏や蔵人に負担をかけていいものが出来るとは思わない。

そんなお話を伺った時に、
ふと、あの「十四代」蔵元の高木辰五郎氏のお話を思い出した。
氏曰く『分をわきまえないといかん』と。

質と量のバランスはいかなる製造業にもつきまとう問題。

あれだけの人気銘柄になってしまった「十四代」をして、
地酒が地酒である為に、それを産み出す人間のキャパ(杜氏、蔵人)を越えてまで
増石するのは、そのアイデンティティを自ら墜す事になるというのだ。

如何に需給のバランスが崩れようと、
質を落としてまで広く届けたところで
それは誰の為にもならない。

そんな氏の「足るを知る」お話を伺ったとき、
「十四代」がかれこれ20年近くもトップを走ってきた理由、
いまだ数多のスター候補が誕生しつつも
追い抜けない理由が分かったような気がした。

「十四代」の高木酒造は地元向けには「朝日鷹」という銘柄を展開しており、
野崎酒造は、地元向けだけの造り、また「しろやま桜」という銘柄を卸している。
この「しろやま桜」がこれまた美味しいわけでして...

少し主旨は違うけど、
昨今、
蔵の経営問題などの早期健全化などを見越してか、
一大消費地である東京を狙って
ものすごい数のお蔵さんたちが売り込みにやってくる。

でも、そこには
東京の人間(トレンド)に向けて造ったお酒たちが並び
本来消費していただくはずの地元への思いは見受けられない。
(実際、蔵の近所の人たちが大手のお酒を探しに来られるなんて話聴くと同情します...)
ラベルや名前や、味わいにしても
購買欲をそそるアプローチ、一口飲んで美味しいと思わせるその技術はたしかにスゴい!
ホントに日本酒と言うのは世界でも類い稀なる発酵技術の賜物だと感心させられる。
素直に美味しいと思うものがたっくさんある。
そんなお酒たちがこれからこの業界を牽引してくれるんだと思うと
ワクワクするし、その未来を共有したいし力になりたいと思う。

でも、
なぜか少し足元がおぼつかないな、なにか抜けてるんじゃないのかなと
個人的に感じてるところも正直あった。

そこに一本の堅い筋をビシッと示してくれたのが辰五郎氏であり、
僕は、同じものを野崎社長の言葉に感じたのであります。







東京に、
本物の地酒あり。






ちなみに、
見学のあとに話した中で、
「このあとは身体を温める為に温泉なぞへといこうかと...」と言ったら、
野崎社長のご好意で
車で「瀬音の湯」まで送っていただくことに!
なにからなにまでありがとうございます...!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

蔵元名:野崎酒造株式会社
代表銘柄:喜正
住所:東京都あきる野市戸倉63
アクセス:JR五日市線「武蔵五日市」駅よりバスで約15分?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

秋川蔵元訪問①近藤醸造

4年に一度の2月29日。
4年前は、旅の途上での一時帰国中、
8年前は、雲南省の麗江。

なにかとどっかに行ってるらしい。

だからと言うわけではないけど、
今年はちょうどお休みと言うことで
蔵見学に行ってきました。

しかも、去年の秋に自転車でふらっと行き着いてしまった
多摩川の上流、秋川渓谷へ。

今度はきちんとアポを取っての訪問。

1回行った道だし、今度はもっと早く到着できるだろうなと
久しぶりの遠出に遠足気分で盛り上がってたのですが、

まさかまさかの「大雪」...

仕方なく電車に乗って目的地へ。

最寄り駅「武蔵引田」を降りると
歩いてすぐにこんな光景が...

ここはどこ!?

まるで雪国のそれであります。
ブーツなんて持ってる分けないのでスニーカーで
積もった雪の中をズブズブと足を入れながら進んでいきます。

右も左も真っ白な世界を歩いていると
いくらiPhoneのGoogle Map見ながらでも目印がなさすぎて
かなり時間がかかりました。

なんとか民家が建つエリアに到着し歩を進めていくと
風に乗ってお醤油のあまーく香ばしい匂いが鼻をくすぐってきました。

最初の訪問場所、「キッコーゴ醤油」醸造元、近藤醸造に到着しました。

しかし、今さら写真を見てもすごい雪ですね。
これ撮影してるとき後ろの車道を走ってた車が思いっきりはね飛ばした
泥の混じったみぞれ爆弾を背中に浴びてぐしょぐしょのドロドロに...んもぅっ!

売店に入り挨拶をすると
こんな日に人が来たよとなかば呆れた顔をしつつ
事務所の方へご案内していただきました。

暖房の効いた事務所で
冷えきった身体を温めつつ待っていると
作業服を着たおじさまが視界に。

あ、この方が担当して下さる方かと挨拶をすると
なな、なんと近藤社長ご本人でビックリ!
社長自らご案内していただけるなんて恐縮です...

しばし、パンフレットや資料を使って
簡単な醤油づくりの行程などをお教え頂き
いざ、蔵の方へ。

実は、今年蔵を新造したそうで(あとちょっとで完成だそう)
ピカピカの設備がズラリ!

仕込みはこちらの新蔵で行い、
もろみは昔からの杉樽へ。

もろみが元気に育っているようです。


そういえば、
日本酒はいまだ尺貫法が廃止になったにもかかわらず
生産量を石高であらわしてますが、
お醤油はリットルになおってるんですね。

しかも、1升瓶が昔から流通してたんだと思ってたんですが
一昔前まで1升瓶ではなくて2リットル瓶だったそうです。
見たことないや。
なんでも厚くてかなり重かったそうな。(割れやすいとも...)

日本での生産量は意外や意外で減ってきてるそうですが
反面、海外での生産量が上がっていて
海外でそれだけ「醤油」が「和食」と共に受け入れられ
もはやスタンダードになりつつあるんだなと思うのでした。

こんな悪天候の中、
いやな顔一つせず丁寧に説明をして下さった近藤社長ありがとうございました!

では...と
駅まで向かおうとしたら
「こんな雪じゃ大変でしょうから、送っていきますよ」と
まさかまさかの展開に!?

しかも、駅までかと思ったら
次の訪問先、「野崎酒造」まで...
ホントにホントにありがとうございます!



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
蔵元名:近藤醸造株式会社
代表銘柄:キッコーゴ醤油
住所:東京都あきる野市山田733-1
アクセス:JR五日市線「武蔵引田」駅より徒歩約10分。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆