11/12/2012

八丈島② 初日〜後編〜

どれくらい経ったのか、
目を開けるとあたりはすっかり暗くなっていた。

ベッドからのそっと這い出し、宿を出る。

旅館や民宿ではないので、
もちろんごはんなど出て来ない。

むろん、それは僕が望んでることでもある。

つたない海外経験をして、
その魅力にハマってしまったのもあるけど、
所詮、閉じ込められた中でなにを見ようがしようが
それじゃ全然面白くもないしかじったことにすらならないと
青いながらに思っているんです、一応。

しかし、いくら八丈島が伊豆・小笠原諸島の中で
一番大きな島と言っても、
島の人は基本家での食事が前提なので
(ここが日本らしいと言えばそんな気もする)
事前にご飯を食べるとこを調べてみたものの
やはりそんな多くはない。

そんな中でまず選んだ一軒。
八丈島郷土料理 梁山泊」さん。

選んだ理由なんて言わずもがなですよね。

宿からお店が集まってるエリアまでは
歩いて15分くらいだったかな。
さすがに集落から離れた宿だったので
けっこう歩いた記憶が...

ガラガラ〜っと戸を開けると
中はお客さんでかなりのにぎわい。

人差し指一本立てて必死にひとりをアピールすると
入り口にもっとも近いカウンター席を案内してもらえた。

さて。
席に着けたのはいいもののココからが大変。
いかんせん重度の優柔不断なので
オーダーが決まらない決まらない。

たまりかねたのか、
店員のお姉さんが注文を取りにきてくれた。

『ご旅行ですか?』
この言葉に助けられ、
『あのぉ、実は島のものを食べたいんですけど...』
と、話をすると
少しして若大将とおぼしき人が
『それでしたら、少しずつでお出ししましょうか?』
と、ありがたきお言葉をかけてくれたので
思いっきりその言葉に甘えました。

で、ご用意していただいたのがこちら。

右手前から、
お刺身、尾長鯛の漬け焼き、隼人瓜と豚肉の煮物、ぶど、島たくあん、
飛魚のさつま揚げ、にょうげ芋、お通しのひじき。

にょうげ芋とは、里芋のこと。島ではそう呼ぶそうです。
添えてあった酒盗をつけるとこれまた絶品!

ぶどは、カギイバラノリという海藻を煮だして寒天状に固めたもの。
磯の香りいっぱいで思わずにっこり。

尾長鯛は、ここらへんでは馴染みがあるそうですが
漁獲高があまり高くないのか僕は初めて食べました。
高級魚と言われたのも納得の旨味と脂のノリにうっとり。

お酒は、もちろん島のものを。

ですが、八丈島には現在4つの島酒を醸すお蔵さんがありまして
それを端から行くだけでも大変なのであります。
(八丈興発,樫立酒造,坂下酒造,八丈島酒造)

ちなみに。
実は、もう一つ磯崎酒造さんがいらっしゃったのですが
惜しまれつつも数年前に廃業されてしまいました...。

一人で来てるからなのか、
店員さんが何かと気を使って話しかけてくれたりして
美味しいお酒とお料理とあいまって
かなーりいい感じに。

こうなると自分でも恥ずかしいくらいに良く喋る。

おかげさまで実に楽しい島での1日目を締めくくることが出来ました。





八丈島① 初日〜前編〜

案内所でゲットした島の地図を片手に
空港を出てみると
ヤシの木が道路沿いに整然と植えられ、
いやはや南国に来たぞー!って気分を嫌が応にも盛り上げてくれます。



そして、町中じゃないから当然だろうけど
人がいない。時折車が通り過ぎるだけ。
いつも人でごった返してる場所で働いてるから
このギャップが堪らない!

とことこと歩く。
いやぁ、こんなにゆっくり歩くのもホント久しぶりだな。
なんでいつもあんなにせかせか歩くんだろ。

町役場でレンタサイクルゲット。
しかも、去年壱岐で借りて感動した電動チャリ!



これで島をグルッと外周してみようと言う算段であります。
それぞれに名前がついてるようで、僕の相棒は「はんけ号」。
注釈によると、島の言葉で「おもしろい」と言う意味だそう。
これは幸先のいい!きっと面白い島旅になるぞ!
では、出発進行〜。
(ちなみに、あとで黄八丈の工房で出会った島ガイドのおじさんに教わったところによると
 「おもしろい」と言うよりは「おどけた」とかの意味合いだそうです)

ほどなく、
パンフレットやガイドブックにも載ってる有名な「玉石垣」が。
まんまる〜。



いやしかし、いくら電動チャリとはいえ、
集落を抜けるといきなり大坂というきっつい上りがあって
いきなりヘロヘロ。

でも!右手にはこれでもかと言わんばかりの絶景!
疲れも吹っ飛ぶと言うものです。



朝から何も食べてなかったので
お店を探しながら自転車こいでたものの
午前中でまだ開いてないところばっかりだったようなので
ローカルなストアで小休憩がてらにパンを購入。



うむ。ローカル色満点♪

黄八丈の工房をチラッと。



すんごいキレイな色。
黄八丈には、「黄」「樺」「黒」と3色の色があるのですが
そのどれもが植物から成るのです。
工房の中にあった白洲正子の写真と一緒に載ってた言葉に、
「本来の草木染めと言うのはくすんだものでなくて実に鮮やかなものなのです」
と、いうような内容が書いてあって(彼女の言葉かどうかは忘れましたが)
たしかにその通りのしっかりとした色合いだったのが印象的でした。

せっかく来てるのにいっつも写真を撮るのを遠慮してしまって
こんな遠目からしか撮れなかったのが実に残念。

さてさて。

さらにぐんぐん自転車をこいでいきます。

唐突ですが、八丈島は温泉の島でもあります。
ま、僕もシマダスで調べるまでは知りませんでしたが。
なんと、島には7つもの温泉があるのであります。

なので、八丈島に行くことを決めた時から
目的の一つにしっかりと島の温泉に行こうと決めていました。

そして、それが初日前半の目的地でもありハイライト。

電動チャリを借りる時に担当の人に温泉はどこがいいですかね?と探りを入れ、
お進めしてもらった場所「みはらしの湯」に行ってきました。

ここのオススメは、なんと言ってもその名の通りその眺め。
温泉から海が一望できるのであります。


(これは休憩所からの景色ですが、イメージとしてはこんな感じ)

季節がらか時間帯からか、他に1組しかいない湯にのんびり浸かりながら
島の海岸線や水平線を眺められるこの空間はたしかにステキ☆

自転車での疲れもすっかり癒されます。

湯から上がり一息ついてるとここで帽子がないことに気付く。

あれ?と、思って脱衣所に戻るも見当たらず
おろおろしてると受付のおばあちゃんも心配してくれて一緒に探してくれた。

それでも見当たらなかったのでおばあちゃんにお礼を言って温泉を後にし、
ちょっと道を戻ってみる。

それでもどこにも落ちてるの見当たらず。

うーん、バックパックの紐に通して結んでたはずなんだけどな。

気を取り直し、電動チャリで出発。

出足の大坂で悲鳴を上げたものの
実はこっから続く「登龍峠(のぼりょうとうげ)」の道が一番キツかった...
いくら電動チャリとはいえ、ね。

しかも、峠を越す一歩手前でバッテリー切れちゃうし(笑)
担当のひとりのお兄さん曰く、
『島一周くらいはウマくやればバッテリーもちますよー』
なんて言ってたのに...そんな電動アシストに頼ってばかりじゃないと思ってたんだけどなぁ。

そんなこんなで峠をなんとか下り、集落へ帰還。

時はすでに14時手前。
ランチの時間が微妙だったので、スーパーで島寿司をかって昼食。



登龍峠のおかげで、見晴らしの湯での癒しもどこへやら
さすがに島の北半分をまわる気力もなく
チャリを返却。

歩いて今回の宿「Hotchy Joe's Hostel」へ。

外で食事が出来る環境の時は
宿は寝れればいい(まぁ、時と場合によりますが)という考えなので
極力安い宿を..と探して見つかったこちら。

なんと1泊2200円。
しかも、ドミトリー。

日本でのドミってのもいいなと即決。

散々うろうろして辿り着いた宿は、港の真ん前。
あぁ、きっとオンシーズンにサーファーとかダイバーの方が
たくさん利用される宿なんだろうな。

ていうか、隣というか併設されてるダイビングショップが受付だったもんね。
(だから入り口が分からず迷ったのねw)

ベッドに案内してもらうと、
今日の早朝からのアレコレとこれまでの日々のアレコレが一気に出てきたのか
猛烈な眠気が。

夜までは少し時間に余裕があるな。

バックパックをドサッと置くと
そう思い、ひとまずごろん。







八丈島 序章(ていうか、幻の青ヶ島行き)

一年ぶりの連休。
なんと今年は偶然にも自分の誕生日を含んでいたので、
これはちょっととっておきの場所に行きたいなーとあれこれ思案。

いくつかあった候補から、
マイルが溜まっていたのと時間的制約内で移動時間が少なく
きっちりオフ感が感じられるところ、
そして見るべき造り手たちがいるところと言う理由で
青ヶ島に弾丸で行こうと思った。

誕生日の夜に青ヶ島で満点の星空を見上げられたらすごいなーって。

そもそも若かりし頃に「青酎」と出会って
それにハマってしまった時からの憧れの場所。

日本最後の密造酒(おそらく)。
一つの名前、蒸留所だけど、造る島人が複数人いて
その人たちで全く味が違うこと。
今でも麹づくりから自然のものを使う伝承的な手法を残す唯一の島酒。
(一部の方の造り方だけですが)
土地の人による土地のもので造る土地の人の為の酒というスタイルを
おそらくもっとも色濃く残しているお酒。


島としても二重式のカルデラ火山を持ち、
日本で一番人口の少ない村でもあり、
(ちなみに日本で一番長い村は吐噶喇の十島村)
住所は「無番地」。


そんな島が伊豆諸島の最南端。
つまり、東京都にある。

東京にある絶海の孤島。

つまり、秘境。

むはー。
そんな単語が並んだら行きたくてたまらないのであります。




今まで行ったイベントで島の人に聞いたりしてはいたけど
改めてアクセスを調べると
東京から直通はなく、
八丈島からフェリーかヘリで行けるとのこと。

なるべくローカルでゆっくりな移動手段が好きなんだけど
断崖絶壁の青ヶ島は、
なんとフェリーの就航率が50%!?

これは時間をお金で買ってでもヘリしかないか...
と、予約の始まる予定日の1か月前に電話をしてみるも
なんとすでに満席で4席のキャンセル待ち!!!

それもそのはず。
青ヶ島までのヘリは1日1便で席数も9席しかないのであります。

でもでも、
誕生日に青ヶ島にいたらの妄想を捨てられず、いざ当日。



八丈島空港の到着ロビーに降り立つと
すかさず案内カウンターでフェリーの運航を聞いてみる。
『あいにく本日は欠航のようですね』

...。


当日天気がよかったのでもしやとは思ったんだけど、
前日までの天気が影響してか風も強く波も高かったみたい。

そっか。残念と思い、ふと左を見やると
「東京愛ランドシャトル」(つまりヘリの)搭乗カウンターが。

あ、そっか。
ヘリもココから出るんだと今さらながらそんなことに気付く。

一か八かと当日キャンセルが出てないか聞いてみるも
『あいにく本日はまんせきですね〜』とごもっともな回答。


ちーん。


はい、夢の青ヶ島行き、
今回は叶わず。

でもでも、ぜったいいつか行ってやるんだもんね。

ということで、バックパックを背負い直し空港ロビーを出たのであります。

9/26/2012

バター × バター

先日、Twitterでその存在を知ってから狙っていた
伊豆大島で造られているバター「大島バター」が
竹芝の伊豆・小笠原アンテナショップ「東京愛らんど」に入荷したとの情報を掴み
空き時間を利用して見事ゲットしてきました。


パッケージがかわいい!
牛さんの表情が若干シュールだけどw
箱を開けると
これまた包み紙にまで三原山が描かれていてレトロでキュート☆


なんでも、2007年に一度は製造をやめてしまったそうなのですが
有志の方々が島の酪農を守ろうと立ち上がり
再出発を果たし、徐々に製品が出てくるようになったようです。

なので、まさか島外にまで出回ってくるとは思わず
この機会を逃すべく買いに行ったのです。

島好き、手仕事の食品好きとしてはマストバイなのであります(笑)

そして。
これまた以前から気になっていたバター「トラピストバター」。


こちらは、ところ変わって北海道のバター。
トラピストの言葉からも想像できる通り、
「トラピスト修道院」という修道院で造られたバター。

しかも、日本ではあまり馴染みのない発酵バターなのです。
ちなみに日本では非発酵バターが一般的で、
発酵バターはヨーロッパで主に使われてるようです。

まあでも、昨今にぎやいだ「エシレ」のおかげで、
だいぶ一般の人にも発酵バターの存在も認知はされたのかな。
(あ、僕も然りですが)

そんな発酵バターを日本の、しかも修道士の人たちが造ってるとあらば
食べてみたいと言うのが食品好きの性というもの(笑)

大島バターを買った後日、八重洲にある北海道物産館をなんとなしに覗いたら
しれっと他のバターに混じって並んでいらっしゃるじゃありませんか!

ということで購入。


せっかく貴重なバターが2つも揃ったのでこれはと思い「バター食べ比べ」をしてみました。

軽くトーストしたパンにそれぞれを塗ってもぐもぐ。


まずは大島バター。こちらは非発酵バター。

色は白みのつよいクリーム色で、フレッシュなミルクの香り。
サラリとしていて実にやさしい味わい。
まるで小さい頃を思い出すような包み込むようなイメージ。
(小さい時にまっとうなバターを食べていた記憶は全くないけど...)

かたや、トラピストバター。発酵バター。

黄色みがかなりしっかりとしたクリーム色。
香りにすでにチーズなんかを想起させる発酵臭が感じられる。
口に含むとその複雑味、コクが口にぽわんと広がってすぅと抜けていく。
リッチ感あり。

そのままアテとしてなんてネットで見かけた気がするけど
それも納得できるほどバター単体で滋味がしっかり感じられる。

これでレーズンバター作ったらおいしいだろうなぁ。


今度は、なんならそれこそエシレと日仏発酵バター比較でもしてみよっかな。


包丁工房タダフサ

去年だったか、お客様でもある親しい方に教えてもらい
一目惚れしてしまった包丁がある。

(ネットから拝借しました)


包丁工房タダフサ
全国に金物の街としてその名を馳せる、新潟県三条市のメーカーさんだそうです。

包丁と言えば、「木屋」さん「有次」さんが憧れの存在だった僕にとって
タダフサさんの包丁はまったく新しいものに映りました。

イメージで言うと
前者のそれは鋭利で力強く凛と引き締まったものであり、
後者は、包丁と言う金物でありながら柔らかく温もりすら感じるものだったのです。

本格的な包丁はあくまでも憧れの存在であり、
テレビの向こう側の人たちのように感じてたんだけど
タダフサさんの包丁は、とっても親近感が湧き家庭で使うイメージがすっと入ってくる。

いわゆる職人たちからどうしてこんな発想の包丁が生まれたんだろう?
と思ったら、柴田文江さんというプロダクトデザイナーがプロデュースに関わってるようで
なるほどと腑に落ちました。

女性だからこそ表現できる曲線美と言うのかな。
柄の部分の質感、丸みは言うまでもなく
刃の部分も含めての全体的なフォルムに至るまで優しい丸みで統一されている。

厨房と言うよりも台所がこの上なく似合う包丁。

どこで買えるんだろう?と、検索したら
パン切り包丁は二子玉の高島屋に入ってる粋更さんで取り寄せが出来たみたいなんだけど
他の包丁もとなると最寄りで船橋にある「みんげい おくむら」さんで取り扱いが!

ていうか、おくむらさんの他の取り扱いにも興奮してしまい
これはいつか行かねば!と思いながらなかなか船橋まで行けずに幾月が経過...

ところが。
先日おくむらさんの話をした友達から
「渋谷のヒカリエで期間限定出店してるみたい」と朗報。

なんとか自分のお休みが出展季刊の最終日にギリギリ間に合ったので
喜び勇んでいって参りました。

購入したのは、
パン切り包丁と三徳包丁(大)の2つ。
(写真左端からの2本)

買ってからも、なんだかもったいなくて全然使えてなかったんだけど
さっきやっとパン切り包丁を使ってみました。

あぁ、情報通りパンくずが少なくてすぅーっとした切れ味。

丸みのある柄はしっくりと手に馴染むし。

道具ってやっぱり大事だな。
これからもっと台所が楽しくなりそう。


2/29/2012

秋川蔵元訪問②野崎酒造

近藤社長の車で、
次の訪問先、清酒「喜正」醸造元、「野崎酒造」へ。

あまりにも雪がスゴい為、
少し手前の「戸倉」交差点で降ろしていただく。

近藤社長、その節はありがとうございました。
(後日、NHKで拝見しました!)

が、
降ろしていただいたものの、
約束していた時間まで少しあったので
わずかでも暖をとりたく
交差点に面しているコンビニに入る。

さぁ!
いざ、野崎酒造!
いざ、その門の中へ!



と、門の写真を撮っていたら
雪かきをしていた奥様に出くわしてしまい
「こんな日にわざわざありがとうございます。社長〜!」

なんて感じで、心の準備などもできぬまま
あれよあれよと言う間に客間へ...

野崎社長、実は新店舗オープンなどの折などにも
お越しいただいたり、
昨年の秋にひょっこり自転車で来てしまった時に
応対していただいたりもあったのだけど、
こうして正式に訪問するのは初めて。

それまでは、
実に控えめな人だなと言う印象があったのですが、
話してみると
そんな印象はちょっと改めざるを得ないほど。

訥々とした語り口ながら、
実に濃い内容をお話し頂きました。

そして、蔵の中へ。

造り自体は終わってしまったものの、
運良く大吟醸の搾りに立ち会うことが出来ました。

しぼりたてのお酒をきかせていただくと、
まだまだアルコール感は強いものの
素晴らしい芳香と旨味が口いっぱいに広がりました。

これは実に楽しみ♪
(ちなみに、見事今年も金賞を受賞されました!おめでとうございます!)

そういえば、
説明の中の「搾り」の部分で、
ちょっと聞き慣れない言葉が...
ヤブタのことを指して説明していただいた時に「エネスケ」って聞こえて、
「???」と思ったんですが、
調べてみたところ、ヤブタというのは
薮田産業(株)が販売している醪圧搾機の通称で
それ以外に、NSKエンジニアリング(株)が販売している機械もありまして。

因みにコレ↓



....「エネスケ」→「NSK」だったみたいです(照)
なんて聞き間違い!

そんな野崎酒造さんのお話の中でとても印象に残ったのが、

・基本県外には未出荷
・8割が地元消費
・地元以外はごく一部の地酒専門店のみ

というところ。

地元の人に喜ばれるお酒でありたい、
だから、それ以外の人たちを意識した商品を作ろうとは考えてない。
海外も然り。
今の規模が質を保てるギリギリのライン。
これ以上、杜氏や蔵人に負担をかけていいものが出来るとは思わない。

そんなお話を伺った時に、
ふと、あの「十四代」蔵元の高木辰五郎氏のお話を思い出した。
氏曰く『分をわきまえないといかん』と。

質と量のバランスはいかなる製造業にもつきまとう問題。

あれだけの人気銘柄になってしまった「十四代」をして、
地酒が地酒である為に、それを産み出す人間のキャパ(杜氏、蔵人)を越えてまで
増石するのは、そのアイデンティティを自ら墜す事になるというのだ。

如何に需給のバランスが崩れようと、
質を落としてまで広く届けたところで
それは誰の為にもならない。

そんな氏の「足るを知る」お話を伺ったとき、
「十四代」がかれこれ20年近くもトップを走ってきた理由、
いまだ数多のスター候補が誕生しつつも
追い抜けない理由が分かったような気がした。

「十四代」の高木酒造は地元向けには「朝日鷹」という銘柄を展開しており、
野崎酒造は、地元向けだけの造り、また「しろやま桜」という銘柄を卸している。
この「しろやま桜」がこれまた美味しいわけでして...

少し主旨は違うけど、
昨今、
蔵の経営問題などの早期健全化などを見越してか、
一大消費地である東京を狙って
ものすごい数のお蔵さんたちが売り込みにやってくる。

でも、そこには
東京の人間(トレンド)に向けて造ったお酒たちが並び
本来消費していただくはずの地元への思いは見受けられない。
(実際、蔵の近所の人たちが大手のお酒を探しに来られるなんて話聴くと同情します...)
ラベルや名前や、味わいにしても
購買欲をそそるアプローチ、一口飲んで美味しいと思わせるその技術はたしかにスゴい!
ホントに日本酒と言うのは世界でも類い稀なる発酵技術の賜物だと感心させられる。
素直に美味しいと思うものがたっくさんある。
そんなお酒たちがこれからこの業界を牽引してくれるんだと思うと
ワクワクするし、その未来を共有したいし力になりたいと思う。

でも、
なぜか少し足元がおぼつかないな、なにか抜けてるんじゃないのかなと
個人的に感じてるところも正直あった。

そこに一本の堅い筋をビシッと示してくれたのが辰五郎氏であり、
僕は、同じものを野崎社長の言葉に感じたのであります。







東京に、
本物の地酒あり。






ちなみに、
見学のあとに話した中で、
「このあとは身体を温める為に温泉なぞへといこうかと...」と言ったら、
野崎社長のご好意で
車で「瀬音の湯」まで送っていただくことに!
なにからなにまでありがとうございます...!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

蔵元名:野崎酒造株式会社
代表銘柄:喜正
住所:東京都あきる野市戸倉63
アクセス:JR五日市線「武蔵五日市」駅よりバスで約15分?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

秋川蔵元訪問①近藤醸造

4年に一度の2月29日。
4年前は、旅の途上での一時帰国中、
8年前は、雲南省の麗江。

なにかとどっかに行ってるらしい。

だからと言うわけではないけど、
今年はちょうどお休みと言うことで
蔵見学に行ってきました。

しかも、去年の秋に自転車でふらっと行き着いてしまった
多摩川の上流、秋川渓谷へ。

今度はきちんとアポを取っての訪問。

1回行った道だし、今度はもっと早く到着できるだろうなと
久しぶりの遠出に遠足気分で盛り上がってたのですが、

まさかまさかの「大雪」...

仕方なく電車に乗って目的地へ。

最寄り駅「武蔵引田」を降りると
歩いてすぐにこんな光景が...

ここはどこ!?

まるで雪国のそれであります。
ブーツなんて持ってる分けないのでスニーカーで
積もった雪の中をズブズブと足を入れながら進んでいきます。

右も左も真っ白な世界を歩いていると
いくらiPhoneのGoogle Map見ながらでも目印がなさすぎて
かなり時間がかかりました。

なんとか民家が建つエリアに到着し歩を進めていくと
風に乗ってお醤油のあまーく香ばしい匂いが鼻をくすぐってきました。

最初の訪問場所、「キッコーゴ醤油」醸造元、近藤醸造に到着しました。

しかし、今さら写真を見てもすごい雪ですね。
これ撮影してるとき後ろの車道を走ってた車が思いっきりはね飛ばした
泥の混じったみぞれ爆弾を背中に浴びてぐしょぐしょのドロドロに...んもぅっ!

売店に入り挨拶をすると
こんな日に人が来たよとなかば呆れた顔をしつつ
事務所の方へご案内していただきました。

暖房の効いた事務所で
冷えきった身体を温めつつ待っていると
作業服を着たおじさまが視界に。

あ、この方が担当して下さる方かと挨拶をすると
なな、なんと近藤社長ご本人でビックリ!
社長自らご案内していただけるなんて恐縮です...

しばし、パンフレットや資料を使って
簡単な醤油づくりの行程などをお教え頂き
いざ、蔵の方へ。

実は、今年蔵を新造したそうで(あとちょっとで完成だそう)
ピカピカの設備がズラリ!

仕込みはこちらの新蔵で行い、
もろみは昔からの杉樽へ。

もろみが元気に育っているようです。


そういえば、
日本酒はいまだ尺貫法が廃止になったにもかかわらず
生産量を石高であらわしてますが、
お醤油はリットルになおってるんですね。

しかも、1升瓶が昔から流通してたんだと思ってたんですが
一昔前まで1升瓶ではなくて2リットル瓶だったそうです。
見たことないや。
なんでも厚くてかなり重かったそうな。(割れやすいとも...)

日本での生産量は意外や意外で減ってきてるそうですが
反面、海外での生産量が上がっていて
海外でそれだけ「醤油」が「和食」と共に受け入れられ
もはやスタンダードになりつつあるんだなと思うのでした。

こんな悪天候の中、
いやな顔一つせず丁寧に説明をして下さった近藤社長ありがとうございました!

では...と
駅まで向かおうとしたら
「こんな雪じゃ大変でしょうから、送っていきますよ」と
まさかまさかの展開に!?

しかも、駅までかと思ったら
次の訪問先、「野崎酒造」まで...
ホントにホントにありがとうございます!



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
蔵元名:近藤醸造株式会社
代表銘柄:キッコーゴ醤油
住所:東京都あきる野市山田733-1
アクセス:JR五日市線「武蔵引田」駅より徒歩約10分。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2/15/2012

神奈川県北蔵元訪問④大矢孝酒造

神奈川の県北には、前述の「清水酒造」「久保田酒造」に
もう一つ「大矢孝酒造」があります。

上2つが相模原市なのに対して、
「大矢孝酒造」はその南部に隣接する愛川町にあります。

大きな地図で見る

地図で見ると、10キロも離れてないのですが
なんとここも交通機関での移動手段がないとのこと。

タクシーを呼んでいくしかないかなと思っていたのですが、
久保田専務のご好意により、
蔵の方に車で送っていただきました。
ありがとうございます!

車で何分くらいだったでしょう?
他愛もない話をしてるうちにちょっと開けた町中へ。
ほどなく目的地「大矢孝酒造」に到着。


出迎えていただいたのは、
八代目蔵元、大矢俊介代表。

しばし客間にて暖を取りながら談笑したのですが、
ソフトバンクの多村選手かのようなセクシー低音から放たれる言葉は
ゆっくりと淡々となんだけど、
ボクの心の中を激しく揺さぶってくれました。
(そういえば、多村選手は近隣の清川村出身)


「こぼれるくらいまで注がれた酒器を持ち上げるのは難しい。
 いい歳した人が身を屈めて下を向きながらお酒を啜る光景は
 なんだか卑しく醜いモノに映る。
 八分目くらいまでしか注がれていない酒器を持って

 ワインのようにとまでは言わないけど、
 せめて上を向いてくいっといなせに飲むようにすることで
 だいぶ日本酒のイメージって変わると思うんです。
 あ、日本酒ってかっこいいなって思わせるだけでも
 きっと変わると思うんですよね。」


日本酒の飲酒人口の減少をどうにかしようと考える時
ほとんどの人がそのモノ自体、つまり味わいに答えを見いだそうとする。
味わいそのものや、それを活かす方法だ。

でも、日本酒を文化的観点から考えて提唱する人は初めてだった。

たしかに、
テーブルやカウンターに突っ伏して
唇をんーと突き出してお酒を啜ったり
こぼれるくらいまでなみなみ注いで...
なんていうやり取りや光景は見ててスマートじゃない。
量を未だに求めてそんなことをしてるようじゃ
どんなに中身が進歩して美味しくなっても
周りから見れば卑しい様にしか見えない。

興味のない人、情報を持たない人を取り込む為には
その第一印象になる、外見・イメージがとっても重要になる。

どれだけお酒自体がおいしくなっても
それを未体験の人にはなんの価値も持たないし伝わらない。
でも、その味がどんなのか分からなくても

それを嗜むことがカッコいいと感じたら
きっと人はそれを手にしようと思うはずだ。

そして、その時はじめて美味しいお酒が効果を持つようになる。

日本人ほど、外見やイメージを気にする民族もいないと思う。
だからこそこういう観点から変えていかないといけないんだと思う。

八分の残り二分には、ものすごい可能性が秘められている。

ボクは、この話辺りから
すっかり大矢さんの人間性に惹かれてしまった。

ここ「大矢孝酒造」が醸すお酒「昇龍蓬萊」「残草蓬萊」に出会ったのは
かれこれ5年くらい前のこと。
その時は、すばらしい食中酒という印象だったんだけど
それから何回か飲むうちにかなりボディのしっかりした熟成系のお酒に
印象が変わってきた。

大矢さんの口から
「米の味わいがしっかり乗ったお酒、燗上がりする酒造りがモットー」
という言葉を聞いて、今までのことがすっと腑に収まった。

季節ごとのお酒と言うよりは、
いつ飲んでも「蓬萊」と思っていただけるようなのを目指しているそうで
基本、3年くらいは寝かせてしっかりと味を載せてから
出荷をするとのこと。
(新酒のしぼりたてはのぞく)

ちなみに、今年から
杜氏を迎えての造りに戻されたそうです。
(妙な縁でその方がたまたま同級生だとか)

上の話や造りの話を聞いてて感じたのが
前述の相模灘の久保田専務と実に対照的で
大矢さんは、ものすごく感覚的な方という印象。
データはあくまでもデータであって
その上で培ってきた自分たちの感性に従ってお酒が
出来上がっていくのを助けてあげるんだと仰っていた。

毎回毎回微妙に条件が違うのだから
同じデータでの仕上がりに正解がなるわけなんてない。
データを加味しながら
持てる限りの感性を駆使して一番の出来に持っていってあげる。

ということらしい。

最後に、8種類ほどお酒をきかせていただいた。
しかも、燗で。

大矢さんが仰った通り、すばたしい燗での伸び方に口元が緩む。
特に、純大は目から鱗の滑らかさでした。

そうそう。
この時にも大矢さんから

「身体を温める為に温めて飲むお酒はあれど、
 美味しく飲む為に温めて飲むお酒は日本のお酒だけだと思うんです。
 ですから、そうやって飲んで美味しいお酒を造りたいですよね。」と。

文化人、大矢さん。
僕にとってまたステキな出会いとなりました。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
蔵元名:大矢孝酒造株式会社
代表銘柄:昇龍蓬萊、残草蓬萊
住所:神奈川県愛甲郡愛川町田代521
アクセス:小田急本厚木駅西口より神奈中バス02系統に乗りおよそ30分。
     「愛川田代局前」下車徒歩2分。
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神奈川県北蔵元訪問③久保田酒造

津久井湖観光センターから久保田酒造までの移動手段はというと
なーんにもない。
つまり、....「徒歩」。

↓の地図を見てもらうと
分かると思うんだけど、
緑の部分を迂回するようにルートが描かれています。

でも、迂回だからといって道が平坦かというとそんなことあるわけもなく
普通に山越えです。


大きな地図で見る

iPhoneで徒歩のルート検索したらおよそ40分。
(Aが津久井湖観光センター、Bが久保田酒造さん)
高低差さえ考えなければ、たいしたことない。
だって、歩くの大好きですもん。

うきうきで進んでいくと
なんだかんだで30分弱で蔵へと降りていく入り口に到着。

途中、超ローカルな酒屋さんがあったので入ってみたら
お酒と言うよりも、食料品店のような状態。
玉泉堂さんのホワイトリカーとおぼしき
いったい何年前のボトル?て、いうものが埃かぶって隅に置いてあったり
久保田酒造名義の見たこともない名前のお酒の「のぼり」があったりしました。
うっかり名前を忘れてしまいましたが、(たしか「楽水」だったかな?)
あとで久保田さんに伺ったら
昔からの需要に応える為だけに造る地元向けの「普通酒」だとおっしゃってました。



かねてより噂には聞いておりましたが
県の「建築百選」にも指定されているという母屋↑は、
すごい立派な家屋です。
中もすばらしい!

なんでも、映画のロケでも使用されたとかで
売店になっている母屋の壁には
その当時のものと思われる色紙が飾ってありました。

仕込み蔵へ移動し
杜氏である久保田晃専務からお話を伺い
実際に蔵の中を見学させていただきました。
その中でも結構印象に残ったのは
美大出身というイメージとは違い
かなりの理論派、理系肌なんだということ。
その追求志向は、どうやら趣味の世界においてもちらほら。

地元の同年代にあたる若手蔵元が
今や全国区に登り詰めていると言う状況への尊敬と
そんな方と同じ志を共有できている事への
嬉しさといったらありませんでした。

一見おとなしそうな久保田専務ですが
言葉の奥底には青い炎とでも言うような
冷静な情熱とでもいうべきものを見させてもらった気がします。

今年もよろしくお願いいたします。

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蔵元名:久保田酒造株式会社
代表銘柄:相模灘
住所:神奈川県相模原市緑区根小屋702
アクセス:JR橋本駅北口より神奈中バス03線に乗り30分。
「無料庵」下車徒歩1分。
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神奈川県北蔵元訪問②津久井湖観光センター

現地での移動方法に頭を悩ましていたのに
清水酒造の前にあるバス停で時刻表を見たところ
けっこう本数があるある。

これで事がうまく運びそう♪
と、いうことで
ほどなくやって来たバスに乗り、予定通り「津久井湖観光センター」へ。

こういう地場のものを扱う道の駅やら直売所は、
僕にとっては子供にとってのおもちゃ屋さんのそれ。

どんなお宝と出会えるのかワクワクしてしまうのです♪

バス停を降りていざ向かうと、
なんとも鄙びたコンクリ製の建物には
なぜかチープなBGMが外に向かって流れていて...
あぁ、ローカル!

中に入ると、
入り口のゆるーい感じから一転
地場の野菜やら加工品やらお惣菜に至るまでびっしり!

そして、なんだか人がそこそこ入ってて賑わってる!
駐車場にはさして車停まってなかったように見えたのになー。
これは素晴らしい。

お酒は、先ほどの清水酒造さんの「巌乃泉」と次に向かう「相模灘」がバッチリ。
お醤油・味噌も同市にある井上醸造さんのがきちんとある。

そのなかで気になったのがなんといっても
「津久井在来大豆」の商品たち。

なんでも昔からこの地で栽培されていた大豆だとのこと。
一般的な大豆より甘味が強いのが特徴だそうです。

乾物の状態で買うのは手間だなーと思っていたら、
なんと、
「津久井在来大豆 蒸かし豆」という缶詰と
「津久井納豆」なる商品が!

それから「干し納豆」も発見。

もうルンルンでレジへ。

一緒に、初めて見た「丹沢みそ」も購入。

なんだかんだで大豆加工品しか買ってないという結果に(笑)

大満足で買い物を済ませ
一路、「相模灘」醸造元、久保田酒造を目指します。

神奈川県北蔵元訪問①清水酒造

地元神奈川には15軒の酒蔵がありまして、
(休蔵してる蔵もあるよーな)
その全てが県央より西っ側にあります。

いつも離れたところのお蔵元さんに気がいってるクセに
実は地元のお蔵元さんに全然伺ってない自分がいまして...

休みもなければお金もない状況で
如何に効率よく生産者を訪ねようかと去年あたりから思うようになりまして、
地方へのルートをワクワク・きゃっきゃしながら調べるのも
もちろん面白いし行けたらそれにこしたことはないんだけど
どーにもそれは色々とリスクが高いだろう、と。

そんな中で辿り着いたのが「原点回帰」というキーワード。

やはり身の回りのところから広げていくのが理にかなっているわけでして。

と、いうことで
今回選んだのは県の北側にあるお蔵元さんへの訪問。

JR橋本駅からバスに揺られること2、30分。
まずは最初の目的地「巌乃泉」醸造元、清水酒造に到着。


バス通りの道路沿いにしれーっと構えていらっしゃいました。
ただ、このお蔵元さんに事前にアポ取ったところ
「造りも終わってしまって見るものもないので...」なんて
電話越しでやんわりと断られてまして(笑)

それでもどんなお蔵さんなのか見れるところだけでも見てみたいし
お酒も買えるみたいだし、ということでの訪問です。


ガラガラっと戸を開けると、販売所となっている土間は
酒粕のいい匂いで溢れてました。

お母様とおぼしき女性が
こちらの存在など気にする呈もなく、
ただただ黙々と酒粕を袋に詰めてました。

そのすぐ奥手にいきなり甑釜があって
けっこうビックリ。
そこを眺めたり、陳列されている商品を見てたりしてたら
いつの間にか後ろに若い男性の方が。

もしや?
と、思ってあれこれ話しかけてみると
こちらに気を使ってくれたのか
「せっかくなので、ご覧になってみますか?」と
何とも嬉しいご提案!

すかさず乗っかり拝見させていただくことに。

 パッと見はコンパクトな蔵なのかと思いましたが
予想以上に奥行きのある造りでした。
なんでも、昔は間口で税金が変わったそうで...

って、京都でそういうのは聞いたことあるけど
こちらでもそういうことがあったんですねー。

そうそう、実はこの清水酒造様は
約260年の歴史を持つ神奈川最古のお蔵元さんなのです。

今の当主で確か10代目とおっしゃっていたかと思います。
ちなみに、男性の話し振りからすると
どうやら彼はその息子さん、つまりは次期当主のようでした。

道具類もかなり年季の入ったものがちらほら。
貯蔵タンクの文字が旧漢字で表記されてたのはちょっとときめきました(笑)

「灘琺瑯 xx石數」的な感じだったような...
字の羅列は曖昧だけど「數」という漢字がやけにインパクトありました。

詳細な石数とかは伺えなかったですが、
5、6人で造ること南部流っぽいこと
宮水の話など
あれこれとお話を聞かせていただきました。

突然の訪問にも関わらずご丁寧に応対頂きありがとうございました!

願わくばいずれどこかのイベントなどでお会いしたいものです。

ちなみに...
これ書くのに一応神奈川県酒造組合のHP見たら
まだ住所が津久井町のままだった...


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蔵元名:清水酒造(株)
代表銘柄:巌乃泉
住所:神奈川県相模原市緑区中野1322
アクセス:JR橋本駅北口より神奈中バス01系統に乗りおよそ30分。
奈良井バス停下車徒歩1分。
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2/09/2012

花菱酢・花菱味ぽん酢

「花菱酢」

この名前を初めて目にしたのは、
愛読するMeetsの緑の表紙の「京都本」だった。

それまで、
「千鳥酢」「富士酢」の存在しか知らなかった僕にとって
コメント欄にあった
「嵐山の超有名店K」や「祇園の懐石料店M」
はたまたあの鯖寿司の「いづう」さんというそうそうたる面子は
ものすごく思いストレートのようにガツンと響き
一気に僕の中での憧れの存在になってしまった。

2007年の夏休みとして京都に帰ってきた時
いくつかのお店を巡る中に
「花菱酢」を造る齊造酢店さんを訪ねてみた。

なんて事はない住宅街に(あくまでも京都のそれ)
気構えることなくたたずむその店の扉を開けて中に入る。

がらんとした土間には
P箱に出荷を待ったお酢が積み重ねられていた。

人気のないその空気を打ち消すように
「すみませーん」
と、数回呼ぶものの反応無し...

もうちょっと大きな声で呼んでみるも
「..................................」
やっぱり反応無し。

そんなこんなで
どうすることも出来ず
時間もおしていた僕は
憧れのお酢を目の前にして
何も手にすることなくみすみす引き下がったのでした。

そんな記憶も薄れかけていた去年の暮れ、
いつも来店下さる常連のお客様から
「京都のすんごいお酢を手に入れたんだけど」と話をもらったのです。

もしかして!?
そう思った僕はかなりの様相でその話に食いつき
あれこれ話をさせていただき
実際に味見もさせてもらったのです。

「やっぱり、もしかしたら...」
そう思っていたのですが,
家に帰ってMeetsを引っ張りだしてきたら
それは、あの時の「花菱酢」ではなく
「玉姫酢」とう斎藤造酢店さんが造るものでした。
(実はこちらもものすごくその筋では有名な幻のお酢だそうで...!?)

そのお酢の話の流れから触発され
久しぶりに調べてみたら
お取り寄せが出来るということで
これは!?と、思ったのですが
問い合わせてみると最少ロットはP箱1ケースぶん。
つまり、6本。

これは一人じゃなかなかに難しいかなーと。
そこで、
ふだん周りにいる方で食に興味のものすごくある方々に
シェアの相談をしたところ、
あっさり快諾の嵐(笑)

ということで、
そこで一緒に出しているポン酢と一緒に取り寄せてしまいました!

見よ!
このレトロなデザイン!
もうこれだけで期待大です!

ちなみに、手元にあった
・雑賀 吟醸酢
・富士酢

と、比べてみました。

3つの中で花菱酢は
味の強さ、ツンとした刺激とも中庸でした。

富士酢ほど柔らかくもなくもすこし厚みがあり
雑賀ほど強さが前面にこない印象。

ポン酢のほうは、
濁っていて旨味がギュギュー!
一口味見してみて、
すぐに脳内にちり鍋や湯豆腐が思い浮かぶあたり
かなーり危険なポン酢なことは間違いないです。

あー、早く堪能したい!

ということで、駄文はこれくらいで。


1/18/2012

2012年スタート。

これを書いてるのは2月も後半なのですが、
やっとこさ重い腰を上げまして。
みなさま明けましておめでとうございます。
年賀状もありがとうございます。
お返ししてなくて申し訳ございません。

職業柄、年末年始が一番忙しく
そのあとにそれを癒す休みなどもあるわけなく
やーっとその気になったと言うか
そんなわけで、今年一発目の記事でございます。


さてさて、
初売りとかそんなことやってる間に
世間的なお正月はあっという間に終わってしまったのですが、
そんな間にお正月らしいことと言えば
元旦に実家で家族とおせちをつついて
酒を酌み交わしたくらいで
それ以外にそれらしいこともなかったわけであります。

でも、
日本人として生まれ育ったからには
初詣くらいには行っておきたいなと。

僕がいる神奈川には
(今は川崎在住なので、あえて神奈川と言ってみるのであります)
最寄りで「川崎大師」、
鎌倉に行けば「鶴岡八幡宮」、
他にも「寒川神社」や、
横浜市民およびベイスターズファンには馴染みの深い「伊勢山皇大神宮」、
あと、
僕が学生の頃にその時の彼女と
懐中電灯も持たずにまだ明けぬ山を登った、その麓の
「大山阿夫利神社」なんかがあります。

そんな列強をかいくぐり
今回僕が行こうと思った先は、
「師岡熊野神社」という、神社であります。

察しのいい方ならお解りかと思いますが,
和歌山は世界遺産にもなった熊野神社の分社です。

以前から熊野詣でしたいと思っていた僕にとって
いつしか知ったこの神社には
密かに行きたいと思っていたんです。

理由はあれこれあるのですが,
大好きな司馬遼太郎作品の一つ「菜の花の沖」で
「熊野牛生法印」という誓文が出ていて
その神性にすごく憧れていたこと、
山岳信仰のメッカのようなところという認識があったのと、
くわえて、
ここの紋が三本足の烏「八咫烏」というところ。

今では日本サッカー協会のロゴに描かれてるので有名な八咫烏ですが、
歴史をさかのぼれば
日本武尊が神武東征の際に熊野国から大和国への道案内をしたとか
太陽の化身として信仰されているとかありまして
とかくそのイメージに憧れていたのであります。

そんなわけで、
東横線大倉山へ。

そこから徒歩で10分強くらいでしょうか。
住宅地を貫く道の右手に池と
その左手に鳥居と階段が見えてきたそこが「師岡熊野神社」でした。

別段大きな神社というわけではないですが
曰く、「関東の熊野神社の根拠地であり、横浜北部の総鎮守の宮」ということだそうです。

お参りをする社殿にかかっていた提灯がまま「八咫烏」で
ちょっとコーフン!

でもなんで今年に限って熊野神社に惹かれたんだろうと思って
社のサイトを拝見してみると
「八咫烏は...夜明けを呼ぶ鳥、太陽を招く鳥といわれ、迷い悩む人々を明るい希望の世界に導く神の遣いの霊鳥...」とありました。

自分にとっても、
今年もあれこれ思い悩みもがき苦しむ年であることは間違いなく
その出口や目指す世界に一歩でも近づくべく試練の年だと思っていたところなので
自然と惹き付けられたのかなーと思ってしまいました。

今を打破する道を見つけるべく
今年も好きなもの心惹かれるものに素直に生きていきたいと思います。