8/11/2007

道の終わりの温泉

終点で降りたバス停で、
さらにバスを乗り換えるとのことで
時刻表を探す。

が、そこには「お盆の期間中の運行はありません」なる貼り紙が…

しかたなく宿に電話を入れると
電話越しでおばあちゃんが
「待ってなさい」と一言言ったきりで
電話の向うからはツーツーという音。

切れてしまったと思いかけ直すと
少し語気を強めながらおばあちゃんが
「迎えに行くから待ってなさい」と言ってくれた。
あの「待ってなさい」はそういう意味だったのかとわかり
嬉しいやら恥ずかしいやら色々な気持ちがいっぺんに
心の中に湧いては混ざりあった。

待つこと数分、
先ほどの声の主と思われるおばあちゃんが
ハイソなセダンに乗って
僕らの待つバス停に車を横付けにした。

ハンドルを両手でしっかり過ぎるくらい握りながら
視界すれすれの座高でこちらの心配なぞ微塵も
汲み取ることなく、
手慣れた(?)感じで車を走らせて行く。

村の幹線道路を左にそれて行き
畑の中を進んで行くと
斜面の先の高い所に立派な木造の建物が少しばかり見えてきた。



通された部屋は比較的新しいと思われる棟の3階。
窓からは眼下に広がる畑や遠くの山々が気持ち良いくらい広がっている。

荷物を置いて一息ついてから
さっそく外に出て散歩をしてみることに。

実は、この温泉街に入ってきた時
車が温泉街と思われるエリアに入ってすぐ止まってしまったため
(つまり宿がすぐの場所にあったということ)
温泉街の全容が全くと言っていいほど掴めていなかったのだ。

宿を出て坂を登る側に足を踏み出す。
すぐ上に行った所に公衆の浴場がある。
さらに上へと進んでみる。
いつの間にか石畳は消え、粗いアスファルトへと変わっていた。
目の前には畑と民家がポツリとあるばかり。
さらに進むも道は遥か先の山の中に消えているだけのようで
建物らしきものは見て取れない。

つまるところ、
この温泉は、
宿から公衆浴場までの5軒ほどの宿だけで形成されてる
なんとも小さな温泉だったのだ。

しかも、
道の終着にあるなんてなんと素敵なロケーションだろう!

日頃の喧噪から離れるにはまさにぴったりの場所。
さて、楽しい夏休みになりそうだ。

5/05/2007

行き先

車輛には、
僕の他ほとんど人はおらず
いつもの人混みがまるで遠い日の思い出のようです。

外の景色を見るということもなく
ただひたすらに
ガタンゴトンとリズムのよいレールと車輪の
鳴らす音に頭の中を支配されながら
じっと座っていると

なんだか急にこのまま見ず知らずの場所へ運ばれていくのではないかと言う
よくわからない不安に駆られました。

視界の外で通り過ぎる街の明かりが
ことさらに僕をまだ見ぬ異界へ連れてきたかのような
哀愁の漂う色をして僕の中に入ってきます。

乗り物に乗ったり、トンネルを抜けるという行動が
どこかここではないどこかへ通じてるんだと思うことがあります。

5/02/2007

回来了!

桜もすっかりつややかな緑色の葉に入れ替わり
日中のお日様のあかりにつやつやと照る色々なものが
濃く力強くなってきました。

地下鉄の駅の階段を下りる途中、
壁に張り紙がしてあるのが見えました。

「今年も帰ってきました!」

何やらそんな文字が書かれています。

その上を見やると、
壁の本当に上の上に、つい立ての様な金具が2つ。
そして、それにかくまわれるようにして乾いた茶色いもの。

そこからはみ出てるつんつんした尾。

つばめです。

こうしてまた、この場所に戻ってきたようです。
親鳥が餌をくわえて戻ってきました。

しばらく彼らと朝をともにする季節がまたやってきました。
巣立ちまでの幾日、僕も上を見ていこう。

4/23/2007

食べたい

残業して小腹が減ったので夜食を、と
コンビにいた時のこと。

後ろのほうから、子供の声が聞こえてきた。
なーんか心をくすぐられる音だなぁ、と耳を傾ける。

その子の発した「食べたい!」という言葉。

しばらくして僕の頭の中でその何故がかちっとハマる。

イントネーション。

その「食べたい!」は、
映画「火垂るの墓」に出てくるせっちゃんのイントネーションのそれだったのだ。

元来、方言の柔らかさにぐらっと来る僕にとって
その子の発する音は本当に愛らしく、
また妄想癖が働いてまだ見ぬ我が子の姿を思い馳せてしまうのであった。

3/19/2007

港町散策

あまりの天気のよさに
外に出なくちゃもったいない!
と、なかば衝動的にチャリにまたがり
坂道を滑り降りる。

ベランダから見える海の風景がとてもキラキラしてて
いてもたってもいられなかったって訳。

最近、その風景の中に風車が加わりまして
それを見に行こうと自転車でGO!

が、風車のあるそこはなんと米軍施設内!?
・・・あと少しという所で泣く泣く断念。
でも、近くの場所から回り込んでやれとばかりに
場所を移動。
結局斜めからのアングルだし距離的には変わらんしで
望んでた画には拝めませんでした。

しかし!災い転じるもので
この回り込んだ先の公園から見えるみなとみらいの風景の綺麗なこと!
いやぁ、これは今後とも来たい場所になりました。
もちろんお気に入りスポットに登録です♪



で、再度ペダルをこぎこぎ向かったは海の向こう側に望んでいた「みなとみらい」
そこも越えて大好きな「大桟橋」へ。
ここから見る横浜の風景がとっても好きなんです。

よく女性誌の撮影場所に使われてたりするんだけど
それも納得。この開放感といい建物の素晴らしさと言いね。

願わくば、ここが本来の任務である客船をもっともっとむかえられるように
なってもらいたいものです。
こんな素晴らしい玄関口ってそうないんじゃない?

ここが初めて足を踏み入れる日本のファーストインプレッションと考えたら
きっとみんな日本にわくわくするんじゃないかな?
やっぱり、この場所からどう入国者を受け入れていくのか
また回遊させるのか。
もっと街づくりをそんな視点から考えたら良いと思う。

もったいないって!
そしてそして、
ぼくはやっぱりこの場所から外国に行きたいな。

上海航路などの復活を切に願います。
羽田行きの航路なんかも欲しいなー。(バスの方が速いか…)

3/18/2007

蓬莱

最近の週末の過ごしかたとして
ちょっとしたごちそうとお酒を嗜んだりしてます。

今週は、日本酒。
元々、僕がお酒に興味を持ったのがこの日本酒というものです。
それまでのどこか鼻や舌に残るイヤな感覚のない
さわやかなお酒にであったのがきっかけでした。
それは、嬉しくも地元神奈川の川西屋が醸す「隆」というお酒でした。

今日の目的はその日本酒。
dancyuの最新号で目にした
地元のお蔵のお酒がどうしても飲みたく。

割と近くにある「君嶋屋」というかなり有名な酒屋さんに行きました。

僕がお目当てにしていたうちの一つ
「蓬莱」を無事ゲット。

欲を言うと、「相模灘」も買いたかったんだけど
こちらは1升瓶しかないということでひとまず断念。
そのかわり,気になっていた栃木の「大那」も購入。



今日のアテは,
・肉じゃが
・空豆の塩ゆで
・鰯のたたき
・マッシュルームのソテー

の4品。

嬉しいことに,
2つとも食中酒として素晴らしい出来のお酒でした。

昨今、香りの強い厚化粧をした娼婦のようなお酒が
人気を博していましたが
やはりそれらが良いのはその一口めまで。

個人的に、長く付き合えるお酒が良いお酒なんではないかと思ってます。
その点で言えば、今日の2種はどちらも素晴らしいお酒でした。
香りは穏やかで、決して料理の邪魔をしない。
これぞ大和撫子という感じです。

地元神奈川にまた新しくこういうお蔵さんが誕生したことに
感動を憶えます。

僕も自分に真っ直ぐな仕事を出来るように見習いたいものです。

3/17/2007

漢字だらけの手紙

去年の夏の終わり。
買い物の疲れを癒すべく、
僕らは日本でも珍しい「哈根达斯」(ハーゲンダッツ)に入ったのだった。

めちゃめちゃ甘い物が好きというわけではないけど
日本ではあまり行かないような場所だし
なんだかテンション上がりまくりでメニューを見たのでした。

「何ちゃらパフェ」みたいなのが
複数のページにわたって色とりどり掲載されていた。
見るからに甘そうです。

しばらくして店員の子がオーダーを取りにきてくれた。

外資系だからなのだろうか?
それとも高級店だからなのだろうか?(両方かもね)
その子は,明らかに外にいるあの人々とは一線を画している。
なんていうか、所作に柔らかさがある。

もうビックリ。
で、あまりにも気に入ったのでこの子に決めてもらうことにした。
店員「何になさいますか?」
ぼく「この中であなたが一番好きなメニューはどれですか?」
店員「え!?そーですねぇ・・・これですね(ページをめくって教えてくれる)」
ぼく「じゃあ、それとあとは・・・これをください(初めから決めてたやつ)」
店員「(さわやかに微笑んで)かしこまりました」

絶対に食べきれないだろうと思われるパフェを勢い余って個も頼んじゃうおつむの溶けた僕。

それから、やんややんや食べて一段落すると
またさっきの子がやってきた。
何やらアンケートに答えてほしいらしい。
適当に書いて渡すと喜んでそれを受け取っていった。
そして、そのあと戻ってきたその子から「This is for you」と
小箱をもらった。アンケートのお返しみたい。
そこには、アイスの形をしたストラップが入っていた。

舞い上がった僕はあまりにもそのサービスが嬉しくて
何かお返しを,と考えた。
でも、そんなものあるわけもなくしかたなく選んだのは「名刺」。
そこに連絡先もきちんと書いて「ありがとう」と渡して店を出たのです。

次の日,車で移動中の僕の携帯に聞き慣れぬ音がー。
おもむろに携帯を開けるとメールのマーク。
いつものスパムかと思いきやなんと、その主は昨日の子じゃないの!

もう、何がなんだか分かりません。

と、そんなこんなで中国滞在中に出会ったその子と
今でも不定期にメールをやり取りしています。

いつも僕の忙しさを心配してくれるこの子からの手紙は
本当に心をほぐしてくれます。元気をもらえます。

部署が変わって中国に行く用事がなくなった僕は
今となってはこのメールだけが僕と中国をつないでくれるクモの糸のような物。

はやいもので今週ももう終わりか,ため息まじりでパソコンを閉じようとしたその時
新着メールの着信音。
また仕事のメールかと思い画面を見ると
そこには1ヶ月ぶりになるその子からのメール。

「!」甘くみずみずしいものが体に広がって
来週もがんばろっと。
そう自然に思うのでした。

3/02/2007

柚香

お酒をこよなく嗜むのですが
それにあわせるおいしいアテを探す先に
紫野和久傳さんがあります。

といっても、京都在住中には高嶺の花すぎて
一回もお邪魔させて頂くことは無かったんですが。

現在は、丸の内にある店舗様にお邪魔してます。

先日も、出先で有楽町に用事があったので
ちょろっと寄り道。

そろそろ春のお持たせが入ってる頃かなと
お店に入ると、いつものきちんとした雰囲気で
声をかけて頂きます。

実は、お店を見る時こういう所がすごい好きだったりします。
京都的に言う【ええ仕事】というんでしょうか。
そんな感じのものが、この第1声に凝縮されてる気がしてなりません。

さて、そんなこんなで気を良くしながらお店を見渡しますと
ありますあります、季節のお持たせ。

目に留まった「春のにがみ」はなんと売り切れ…
そりゃそうか。
きっと皆口にしてみたいとお思いでしょう。

一足先に舌で春を感じてみたかったのですが残念。

と、次に目に留まったのは「柚香」。
これはアテではありません。
柚子の皮のチョコレート掛けというものでしょうか。

甘いモノもいけるクチなので、今回はこれを頂くことに。
口に入れるとこれがまたなんとも大人な一品。

表面に苦いココアパウダーがかかっているので
本来ほろ苦いはずの柚子がなんとも爽やかな甘みで溢れるのです。
ただ甘いだけでなく、苦さによって甘さを感じさせる。
心憎い演出です。

麦とかの熟成させた焼酎なんかと合うんじゃないかな。
ちょっと焼酎バーなんかに置いてあっても面白いかも。

結局、お酒に行き着くのか(笑)